予防接種支援のための日付電卓の
開発と使用経験について


はじめに

予防接種外来では日付計算の頻度が高い
日付計算を支援するツールは少ない。
関数電卓は時分秒計算はできるが、年月日は計算できなかった。
スマートホン等の日付電卓アプリに電卓の簡便性を備えるものは見当たらなかった。
予防接種支援を主眼にした日付電卓プログラムを試作、試用した。

設計方針

PCとタブレットで使用できる。
パソコンのキーボードにある記号を演算子として使用。
通常の電卓に似た操作感、キー配列。
開発言語と実行環境
ホームページの記述言語  javascriptで作成。
Shurey氏作「JSこども工作教室」の「電卓」と「記述式計算機」を元に作成。(http://www.shurey.com/js/craft/index.html)
動作環境:ウエブブラウザを備えた機種
開発/試用機種: 
Internet Explore, Google Chrome
Amazon Kindle Fire 7 Silkブラウザ

型定義と、日付計算ルール

日付型: 数値に “.”が2個あるものと定義。
例:“2018.12.09” 
西暦年は“#”を、元号年は“H”,”S”,”T”を年の前に付ける。 “#”は省略可
“.” は省略不可。数字は省略すると今日の年月日が入る。

操作ビデオ: ビデオ1

日差型: 歴差を日差型と定義。
1年2月3日後は“1y2m3d”、20週後は“20w”と表記。
演算: 演算例 結果
日付+日差⇒日付   2018.12.9+7y6m= #2026.06.04
日付−日差⇒日付 H30.12.9−20w= #2018.07.22
日付−日付⇒日数 .12.9−H27.3.5= 1375
日付/日付⇒日差 .12.9/H27.3.5= 3y9m4d
演算子の優先度は無く、左から順に評価。(電卓方式)
通常の四則計算も使用可能。

操作ビデオ: ビデオ2

メモリー機能
今日メモリー: 本日が自動的に入る。Rで呼び出せる。
誕生日メモリー: 誕Wでセットすると、誕Rで呼び出せる他、一般メモリー、今日メモリーの年齢と年度末年齢を表示する。
ワクチン向け計算機能
[→元号] : 西暦元号換算。式入力欄の年の西暦と元号を変換する。
[年早見]:画面下に年齢早見表を表示
[月早見]:式入力中の月から何カ月後/前の月を示す早見表を表示。
[ロタ期限]:誕生日メモリーの6w,20w,24w,28w,32w後を表示
[HB日程]:式入力をHB1回目として+4w,+20w,+1y-1を表示
リコール機能
▲: 前回の式を呼び出す。

操作ビデオ: ビデオ3

操作感:

年.月.日形式の入力に慣れるまで1週間要した。
PCのブラウザでキーボードとマウスでの使用は、実用的でなかった。
7インチタブレットでタッチパネルで使用すると実用的であった。
10インチのタブレットで使用すると手の動きが大きく卓上で邪魔であった。

実用性:
初診時の接種計画立案は、Excelマクロの方が適した。
2回目以降来院日が予定と異なるときの間隔確認、1歳でのPCVの60日間隔、接種漏れキャッチアップの上限確認など、イレギュラーな計算には有用であった。

考察

予防接種外来では日付計算を多用する。外来中の多様な思考中・疲労下での日付計算を暗算することは重荷。
日付計算は暗算/筆算で行うことが多いが、煩雑で誤りが入りやすい。
日付計算可能な日付電卓をjavascriptで試作試用した。
廉価に市販されているタブレットで実用性能が確認された。
http://vc.kkch.net/calc/で公開。